徳島から始まる旅路
〜四国巡礼 徳島五ヵ所まいり〜
弘法大師空海にゆかりのある八十八カ所霊場をめぐる四国遍路は、
平成27年に日本遺産に認定され、国内はもとより海外からも大勢の方が訪れています。
しかし全行程は1400km以上にも及び、歩き遍路で巡礼すれば1ヶ月以上もかかってしまいます。
そこでおすすめなのが、幾つかの札所をお参りする区切り打ち。「何番から何番まで」と予定を決めてめぐる、巡礼の方法です。
徳島市内には第13番大日寺、第14番常楽寺、第15番国分寺、第16番観音寺、第17番井戸寺の5つの霊場を巡る
「五カ所まいり」があります。1日で気軽にできる「歩き遍路」として親しまれています。
大師様と「同行二人」。静かに自分探しの旅を
してみませんか。
お遍路はマナーを守って巡りましょう
金剛杖はお大師様の分身です。
お遍路に欠かせない金剛杖はお大師様の分身と謂われています。持つときは必ず合掌してから持ちましょう。またトイレなどに持ち込んだり、地面にそのまま置いたりしないようにしましょう。
お接待は感謝の気持ちを忘れずに
四国遍路の特色とも言える『お接待』。札所で接待が行われたり、歩き遍路中に地元の方が食べ物などを施してくれたりします。四国霊場信仰の一つなので、断ったりせずに気持ちよく受けましょう。
お参りは本堂だけでなく大師堂も
四国霊場には本堂の他に、弘法大師を祀る『大師堂』があります。お参りする際は、本堂だけでなく大師堂も必ずお参りしましょう。
代表的なお遍路用品
金剛杖(こんごうづえ)
四国遍路に欠かせないのが金剛杖。「お大師様の分身」と言われているため、取扱には敬意が必要です。
菅笠(すげがさ)
お遍路さんがかぶっている円錐形の帽子。四国遍路の菅笠には『同行二人』の文字や梵字が書かれています。
白衣(びゃくえ・はくえ)
遍路の装具。道中衣と判衣があり、巡礼の際に一般に着用されるのが道中衣でお遍路さんの正装です。
納経帳(のうきょうちょう)
四国遍路専用御朱印帳と言えるのが、『納経帳』。最近ではサイズもデザインも種類豊富になっています。
経本(きょうほん)
般若心経などの他、各札所で奉られているご本尊の『真言』が書かれたものです。本堂や大師堂をお参りする際に使います。
数珠(じゅず)
お数珠は普段使われているものでかまいません。弘法大師が開祖となる真言宗用の数珠を使う方もいらっしゃいます。
ろうそく・お線香
参拝する時に使うろうそくとお線香は、各札所で売っていることもあります。
しあわせ観音様に幸せ祈願
「第13番 大日寺」
「第13番 大日寺」
阿波の総鎮守である一宮神社の真向かいにあり、かつては別当寺として神社の管理を行っていたという歴史を持つお寺です。境内にある「しあわせ観音」は、合掌をしている手の形をした逗子の中に、やさしいお顔立ちの観音様が収められています。この観音様に幸せを祈願すると、願いが叶うといういわれも。また本堂の左側には、撫で仏のおびんづる様も座っており、願いを叶えながら撫でると、叶うといわれています。お遍路さんを迎える宿坊もあり。
大日寺のお向かいには一宮神社があります。札所の周辺には、昔ながらの遍路道の風情がたっぷり。
流水岩の庭園がある
「第14番 常楽寺」
「第14番 常楽寺」
四国霊場の中で唯一弥勒菩薩を本尊としています。訪れる者を圧倒するのは、断層のある大岩盤がつくりだした流水岩の庭園。この場所に境内を移転した際、山を切り崩し、埋め立てを行ったことにより生まれたそうです。ゴツゴツとした岩肌があらわになっており、自然のアートのような趣を呈しています。風雨に晒されることにより、今も少しずつ変化をしているとか。また境内にあるアララギの霊木は、糖尿病や眼病を癒すご利益があるとされています。境内ではたくさんの猫がくつろぐ姿も。
境内を歩いていると写真の可愛い石像。
その優しい表情に癒されること間違いなしです。
その優しい表情に癒されること間違いなしです。
ゴツゴツとした大岩盤が独特の景観を生み出している札所。雨の日は滑りやすくなるのでご注意を。
歴史の一ページを記憶に残そう
「第15番 国分寺」
「第15番 国分寺」
国分寺の中にある枯山水の庭園は国の名勝にも指定され、四国の札所の中でも随一の規模を誇っており、中国の水墨画の影響を受けて作庭されたといわれています。立石で表現した滝や阿波の青石を配置した築山が見事な庭園です。
昭和15年に作庭家重森三玲氏によって見出された庭園。平成12年に国の名勝に指定されました。
町並みの中に佇むお寺
「第16番 観音寺」
「第16番 観音寺」
国府のしっとりとした町並みの中にあり、訪れるだけで癒されるお寺。ご本尊は弘法大師が自ら彫造した千手観世音菩薩で、両脇侍には不動明王と毘沙門天が安置されています。鐘楼門をはじめ本堂や大師堂などの建造物は、いずれも歴史を感じさせるもので、境内にしばし佇んでそれらを眺めるのも心豊かなひととき。大師堂右の岩の中に、赤ちゃんの夜泣きや不眠にご利益があるとされている「夜泣き地蔵尊」があり、多くの人から信仰を集めています。
夜泣き封じの願掛けをし、ご利益があった人はよだれかけを奉納するという習慣が残っています。
本堂前に佇む修行姿のお大師さんの像が、お遍路さんをあたたかく出迎えてくれているかのよう。
ちょっとドキドキ?面影の井戸
「第17番 井戸寺」
「第17番 井戸寺」
ご本尊の七仏薬師如来は、聖徳太子作といわれており、弘法大師作の十一面観世音菩薩や十二神将、四天王なども安置されている由緒あるお寺。本堂の手前左側の日限大師堂の中にある「面影の井戸」は、弘法大師が自らの杖でわずか一夜にして掘ったと伝えられています。井戸を覗き込んで自らの姿が映れば無病息災、万が一、映らなければ3年以内に厄災が訪れるといわれています。井戸の水を持ち帰り、ご利益を授かる人も多いそうです。
左が本堂、右が大師堂。本堂では七仏薬師如来を間近に拝観することができます。
由来ともなった「面影の井戸」。「自分の姿が映らなかったらどうしよう」とドキドキしながら覗きこむ人も。
「パワースポット」としても人気の四国遍路。徳島市内にある5つの札所も、それぞれに見どころやご利益があり、祈りを受け入れてくれています。各札所ともに駐車場を完備していますが、全行程は約8km。
時間に余裕があるなら、徒歩や自転車で「五ヵ所まいり」を楽しんではいかがでしょうか。
時間に余裕があるなら、徒歩や自転車で「五ヵ所まいり」を楽しんではいかがでしょうか。
取材・編集/四国旅マガジンGajA編集部 掲載内容は2018年12月現在のものです。